海が吠えた日 第28回 「昭和二十一年十二月二十一日」 八十代 男性

2011年2月22日

二十一日の未明、突然大きな地震が起こった。横揺れで家が大きく揺れだした。立っておれない。何回となく断続的に揺れる。

 港の方を見ると、潮が急に引き出している。どこからともなく、「津波が来るぞ!」の声が聞えてくる。また大きく家が揺れだしたので、まず子供たちを前の原っぱに避難させ、家に戻り布団等を二階に持ち上げて下りようとしたが、揺れがひどく段梯子がはずれそうになった。

かろうじて階下に下り、戸締りを厳重にして、家内が下の子を背負う、私は気がせいていたのか足袋はだしで、二人の子供を連れて走りだした。新町辺りに来るともう小学校の校庭には、第一波の津波が来ている。まだ道路までは来ていない。

必死に走り、T理髪店のあわえを上の町に出る。このため水には濡れずに杉王さんにたどり着くことができた。ふと気がつくと、二人の子供がいない。あわてふためいて捜すうちに、運よく子供たちも杉王さんに着いており、一安心し、ほっとする。

 津波の第二波、第三波はしらないが、東のAおじさんが、中之島の水門の所で津波に呑まれ遭難された。またIお婆さんが物を取りに帰り、途中逃げ遅れてYの隣りの家へ、木材と一緒に巻込まれ遭難した。

Sのおばさんも、子供を背負って逃げる途中に、子供が背中からずり落ち死なせた等、数々の死傷者が出たことは、当時の惨状を物語るものである。夜明けを待ちかねて家に帰ってみると、店は壊されている。家は入口の柱二本が折れていた。

その上、川に堤防がない時だから、漁船が打ちあがって店の前にがっぷり斜めに塞いで、入るところがない。両方の壁は打ち抜かれ、商品は半ば流失し、無惨な状況でした。
 今にして思えば、津波は二波、三波と来る。津波に巻きこまれると歩けなくなり、引潮に呑まれることがある。

津波は地震直後に来るから、家財等に執着せずに、早く安全な場所に逃れること、また近所の人々に津波が来るぞ!と大声で知らせること、等が必要と思います。今後、天災、地変はいつ来るとも知れない。私の体験を書き、まさかの役にたてばと思うしだいです。

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