海が吠えた日 第48回 「津波が来るとは!!」 六十代 女性

2011年7月12日

 物凄い地響きと共にガタガタ、バリバリと揺れ出しました。大地震です。当時は父、兄、私と三人の生活でした。津波のことは全然知らず、兄は大したことは無いと言ってまた床につきました。

 その時です。近所のGさんが「津波が来るぞー」「井戸の水が噴き出しているぞー」と大声で叫んでいるのを聞き、飛び起き玄関の雨戸を開けたが開かない。裏口に廻るも積んであったオロサが倒れてきて引戸が開かない。また玄関に廻り雨戸を叩き割り三人が屋外に飛び出したが、既に近所の人々は逃げて誰もおりません。

梶田の角まで来たら浜の方向から潮が押し寄せて来ました。「助けてくれ」と誰かがセイロにしがみつき流されて来た。しかし助けることもできず夢中で昌寿寺山めがけて逃げた。

 瀬戸川橋まで来ると橋の上まで潮が来ており、三人が手を取り合って無事渡り山に駆け登りました。避難することが一刻遅ければ命を落す瀬戸際でした。下の田圃では「助けてー助けてー」と何とも言いようのない悲鳴が各所から聞えてきて耳を覆いました。しかしどうすることもできませんでした。

 夜も白々と明けて眼下を見ると我が家、近所の家々も無事で安堵の胸をなで下ろしました。しかし真下の田圃には浮流物が山のごとく流れつき、何とも言えぬ悪臭が漂っており、一人の犠牲者が発見されました。あれから五十年過ぎた今でも走馬灯のように脳裏に甦ります。

◆「海が吠えた日」は、牟岐町においてまとめられた「南海道地震津波の記録」です。
 詳しくは、牟岐町ホームページをご覧ください。
 
【参考サイト】
牟岐町ホームページ

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昌寿寺山

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