【開催結果】平成27年度 とくしま食の安全・安心フォーラム

2019年5月9日

  社会的関心が高い「機能性表示食品」や「一歩先を見据えた食品表示行政」について,県民の皆様と共に考え,食品表示に対する相互理解を深め,食の安心につなげていただくことを目的に,「とくしま食の安全・安心フォーラム」を開催しました。

 

1 と き 平成28年3月14日(月) 午後1時30分から午後4時まで

 

2 ところ 徳島グランヴィリオホテル

 

3 参加者 185名

 

4 主 催 徳島県・特定非営利活動法人 徳島県消費者協会・一般社団法人 徳島県食品衛生協会

 

5 フォーラムの概要 

開 会 挨 拶  

   挨拶 飯泉 嘉門 徳島県知事

    【知事挨拶】 

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【第1部】特別講演

(1)特別講演「機能性表示食品の実態と安全性確保~消費者はどう選択するか~」

     講 師 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所
            国立健康・栄養研究所 情報センター長        梅垣 敬三 氏

 

 梅垣先生からは,機能性表示食品だけでなく健康食品全般において,安全で効果的な利用方法や,食品の機能性をどう考えるかについて御講演いただきました。

  梅垣先生は,健康食品は,誰が,どのような製品を,どのように利用するのかが一番重要で,良い製品でも使い方を間違えれば悪い製品となるので,消費者は使い方の問題を認識してほしいと,繰り返しお話されておりました。
 個々の消費者に適した安全で効果的な製品の利用方法については,消費者と専門職等とのリスクコニュニケーションを充実させ,専門職が消費者に個別に情報を伝達することで,情報が正しく伝わるということでした。

 

 特別講演の一部をご紹介します。

*食品表示は,消費者と企業を結びつける一つの言語である。今は企業が商品を売るために表示を使っているようになっているが,本来は,消費者が商品を選択するためのものである。それを調整しているのが行政である。
*基本的に,食品に薬のような効能機能の表示はできない。理由は,効能機能の表示を見た消費者が薬と勘違いして,自己判断で病気の治療目的で使うおそれがあり,まともな医療ができなくなるからである。例外的に,保健機能食品には表示ができるということ。
*健康食品が関係した被害は,健康被害と経済被害の2つあり,経済的な被害の方が大きい。健康被害には二つあり,まず,健康被害がでやすいのは違法製品で,医薬品成分が入ったり,有害物質を含む製品の利用であるが,そんなに多くはない。もう一つ問題なのが,利用方法の問題。製品の問題はなくても,消費者の人がどう利用するかによって被害が出る。例えば,医薬品と間違えたり,医薬品との飲み合わせの影響,それから体質が合わないで利用してアレルギーを起こす場合,病気の人が薬と勘違いして利用する場合,それから,過剰摂取である。こういうことが原因で健康被害が起こってくる。
*食品にゼロリスクはない。特に,錠剤・カプセル等の健康食品を自己判断で利用する場合は,いつ,どこの製品を,どれだけとって,調子は良かったかどうかというのをメモをとってくださいとお願いしている。
*食品である以上,効能効果が明確に出てくるものではないが,生活習慣病の原因は生活習慣なので,トクホが生活習慣や食生活の改善の動機付けになれば効果が期待できる。例えば,トクホを摂るから今日は歩こうとか,トクホを摂るから今日はちょっと脂ものを控えようとなればいい効果が出る。これが賢い使い方である。
*健康食品は「全て悪い,良い」と,両極端には判断できるものではない。だれがどういう製品をどうやって使うかにより,良い場合も悪い場合もあるので,企業の方にはこの点を考えてアピールしていただきたい。

       【特別講演】             【梅垣先生】             

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    梅垣敬三先生 特別講演資料_.pdf

(2)取組発表「機能性表示食品を目指して~スダチチンの取組~」

         発表者 池田薬草株式会社 開発部 部長 敷島 康普 氏

 

 機能性素材及び機能性食品の開発や六次産業化の取り組みについて,また,徳島県ならではのすだち果皮を利用しての研究について発表いただきました。

 今後は,スダチ果皮エキス末を配合した機能性表示食品の届出を目指していきたいとのことでした。

 
       【取組発表】            【敷島先生】 

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【第2部】 パネルディスカッション

 「一歩先を見据えた食品表示行政の実現に向けて~徳島からの発信~」というテーマで,パネルディスカッションを行いました。
 まず,西條課長に「徳島県の食品表示行政のあゆみ」についてご説明頂き,続いて,パネリストの方々にご発言いただいた後,意見交換を行い,その後フロアの方々からも御意見や御質問等を頂きました。

(1)徳島県の食品表示行政のあゆみ

       徳島県 危機管理部 県民くらし安全局 安全衛生課    西條 和芳 氏

 徳島県は,食品表示行政において,常に「消費者目線・現場主義」に立ち,全国モデルとなる先進的な取組みを実践しており,その経緯や施策・事業の取組状況を説明されました。 

■徳島県の食品表示行政のあゆみの一部をご紹介します。

*平成12年の雪印集団食中毒事件や,平成13年のBSE問題の発生により,平成15年度,食品安全基本法が公布され,食品安全委員会が設置された。徳島県では,国の動きにいち早く対応し,平成16年度に,「食の安全・安心」に係る様々な課題に機動的に対応する組織として,複数の部局にまたがる「食の安全・安心企画員室」を設置。平成18年度には,「徳島県食の安全安心推進条例」を施行し,食の安全・安心対策の推進を図ってきたところ。
*平成19・20年には,「鳴門わかめ」や「うなぎ」の産地偽装が発覚したことから,平成20年度には,危機管理局 県民くらし安全課を新設し,「食の安全・安心行政と消費者行政」の一元化を図る。
*続いて,平成21年度には,農林水産部から「JAS法の品質表示の適正化に係る権限」を当部局に移管し,「JAS法等の食品表示行政,食の安全・安心,消費者行政」を一元化した組織を整備。合わせて,「消費者目線,現場主義」に立った政策提言を行い,「消費者庁や消費者委員会の設立」,「JAS法における措置命令権限等の知事への移譲」の実現に大きく貢献した。
*平成22年度から平成24年度には,「科学的産地判別分析」を用いた調査手法を導入し,「とくしま食品表示Gメン」を発足させている。

*平成25年度には,ホテルレストランにおけるメニュー等の不適正表示事案が発覚する中,本県からの政策提言により,平成26年6月,景品表示法が改正され,違反事業者に対する措置命令などの権限が知事に委任されたほか,
同年11月の同法の改正において,違反事業者の不当利得を返還させる「課徴金制度」が創設されることとなった。また,「食品表示法の施行」など,食品表示行政に大きく貢献。
*今年度は,全国初の「食品表示の適正化等に関する条例」を施行し,食品衛生法の許可対象外である水産加工業者などの業の届出や,県産物の表示をしている食品に係る仕入関係資料等の整備保存を義務化するなど,トレーサビリティ制度の導入に,先駆的に取り組んできた。更に,これらの取り組みを発展させ施策を計画的かつ戦略的に推進するため,今月,「徳島県食品表示適正化基本計画」を策定する予定。
*徳島県では,食品表示に係る執行を一元的に担う組織体制の整備を図っている。また,部局横断的に配置した70名の「とくしま食品表示Gメン」が,食品表示の適正化に向け,包括的な監視指導,相談業務にあたっているところ。

 

   西條課長1.JPG  すだちくん.jpg 西條課長2.JPG

 

(2)パネルディスカッション
一歩先を見据えた食品表示行政の実現に向けて~徳島からの発信~

 馬原コーディネーター司会のもと,それぞれ立場の違う消費者,学識経験者並びに行政が,「一歩先を見据えた食品表示行政」を実現するためのディスカッションを行い,相互理解が深まりました。

【パネリスト】

 特定非営利活動法人 徳島県消費者協会会長 齋藤 郁雄 氏

   国立健康・栄養研究所 情報センター長 梅垣 敬三 氏
 消費者庁 表示対策課 食品表示対策室 食品表示調査官 田中  誠  氏

 徳島県 危機管理部 県民くらし安全局長 篠原  敬  氏

【コーディネーター】
 徳島県医学・感染症専門員  
   徳島県食の安全安心審議会安全性評価部会長 馬原 文彦 氏

 

 ■各パネリストの発言テーマ
    消費者代表:徳島県消費者協会会長 齋藤 氏
          「消費者が主役の食品表示とは」
   学識経験者:国立健康・栄養研究所情報センター長 梅垣氏
           「一歩先を見据えた食品表示とは」
   消費者庁 :表示対策課 食品表示調査官 田中氏
                  「消費者庁の法執行体制及び都道府県等との連携による食品表示行政」
   徳島県    :危機管理部 県民くらし安全局長
                  「一歩先を見据えた食品表示行政の実現に向けて~徳島からの発信~」

 

■各パネリストのディスカッションの一部をご紹介します。

*齋藤会長より,「梅垣先生から,食品表示は消費者に正しく理解されなければ意味がなく,学校での教育が一番必要であるという貴重なご意見があったが,私たち大人になった消費者は,どのように勉強していけばよいのか。」と質問がされ,それを受け,梅垣先生より「多くの健康食品は,情報提供にインターネットが利用されており,高齢の方やインターネットを利用しない方に情報提供するのは難しい。そこは今,実は課題で,それを消費者団体と連携して,できるだけ個別に印刷物等を配付できるような仕組みができないかということを考えている。できたら消費者団体と一緒にしていきたい。」というお話しがありました。
*田中調査官より,「食の安全や消費者の利益を守るためにもトレーサビリティは非常に重要で,徳島県のトレーサビリティについての先駆的な取り組みは,非常に重要で有益な取り組みをされていると思う。ワンストップの表示相談は,消費者庁への要望も多く,徳島県のようにワンストップで表示相談が受けられることは,事業者にとっても消費者にとっても非常に有益だろうと思っており,先駆的な取り組みだと思っている。」との発言があり,その発言を受け,篠原局長から,「徳島県はこのように色々な先駆的な取り組みをしているという実証フィールドがあるので,国と一緒に食品表示行政を推進していきたい。」との発言がありました。

 

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 フロアとの意見交換では,会場が一体となり「食の安全・安心」について考えることができ,参加者の皆様との信頼関係を深めることができました。

■フロアとの意見交換の一部を紹介します。
≪質問1≫
 今回の鳴門わかめの偽装について,残念に思う。国あるいは県においても一生懸命力を入れていると思うが,なお一層の力を入れで偽装がない誇れる徳島名物であるよう念じている。
<回答(篠原局長)>
 本県では,全国初となる「食品表示の適正化等に関する条例」に,食品表示法では保存義務がない「仕入れ関係書類等」の整備保存を義務づけ,食品製造過程の「見える化」を推進し,事業者とともに食品の信頼性確保に努めている。また,産地偽装の抑止力として「科学的産地判別分析」を実施するなど,全国に先駆けた施策を積極的に展開しているところ。つまり,これら充実した監視体制により,不正をいち早く見つけることができたということ。今後は,「鳴門わかめ認証制度」の拡充に向け取り組むとともに,「食品表示Gメン」による監視活動の一層の強化を図り,「食の信頼回復」にしっかりと取り組む。
<回答(田中調査官)>
 産地偽装については,食品表示法で厳しい罰則を設け,景品表示法でも新たに課徴金制度ができた。これに関しては,いくら罰則を強化してもなかなか無くならない現状であるが,厳正に法を執行して産地偽装などの事件をしっかり措置をして公表していくなど,厳しい執行体制を示していくことが一番重要と考えいている。そのためには,一元的に法を執行できる体制で,厳しく罰則ができる体制を整えるところが重要である。徳島県は,消費者庁とほぼ持っている法律が一緒なので,一斉に動くことが可能になる。そういった徳島県の体制が全国に広がればいいと思っている。

≪質問2≫
 「一歩先を見据えた」ということで,日本の食品表示の状況についてはEUやアメリカと比較してどうなのかということを教えてもらいたい。また,インバウンドが増えているということで,消費期限や賞味期限くらいは英語表記でもいいのかなと思うが,その辺について議論されているのかどうか教えてもらいたい。
 <回答(田中調査官)>
  欧米においては食品表示は消費者への情報伝達の重要なツールとされているが,消費者の自己責任に重きを置いた体制をとっているのが欧米である。日本では今まで培ってきた消費者の方への情報伝達のあり方というのは欧米と大きく違うので,そこを一元的に取り入れるというのではなくて,今まで食品表示で法律の目的が違う食品衛生法,JAS法,健康増進法がやっと一つになって5年をかけて消費者の皆さまに理解していただこうとしている。そこが見えた後に欧米の良いところを参考にするが,日本において何が必要か,あと4年の完全施行までに見ていかなければいけないと考えている。
  栄養成分表示が義務化され,加工食品には栄養成分表示がされてくるので,消費者の皆さんがご自分が食べる物を見直すきっかけになるのではと考えている。
 <回答(梅垣先生)>
  食べるもの,食生活,遺伝的要因などは,海外とは同じ部分も違う部分もある。例えば,アメリカではダイエタリーサプリメントの表示制度が法的に定義されており,海外が進んでいるとよく言われるが,本当に役に立っているかどうかというと,最近の論文を見ると,余り役に立っていない。理由は,ビタミン・ミネラルの機能性の科学的根拠データは多いが,サプリメントを摂っている人は,普段の食生活もかなり充実していることが考えられるからである。また,日本人は色々なものを食べるので欧米とは違うということも考えていかなければいけない。

≪質問3≫
 わかめ問題がとりざたされているが,取り締まりだけが重要というのではないと思うので,Gメン活動の中で食品の良さ,徳島の良さのアピールができないか。
  <回答(篠原局長)>
 Gメン活動の1つは抑止効果ということで,表示が適正にされていないことがないように監視活動をしている。本日は,条例やわかめの話がでてきたので,取り締まりの部分だけがクローズアップされたが,取り締まりばかりではなく,このようなフォーラムの場での情報提供や,子供達へのジュニア教室の開催など,食品表示や食の安全安心に関する情報発信もしている。今後も,食の安全安心担当として,色々な制度の仕組みを理解いただけるよう情報提供を行い,また,子供たちへも表示の目的などについて情報発信をしていくので,ご理解いただきたい。

 ≪御意見≫
 小学校1年からお小遣いで買い物をしたりするので,体験的な消費者教育が必要であり,食品表示の教育を入れていただきたいと思っている。小学校1年から高校3年生まできちんとしたトータル的な教育ができるようになればすごく良くなると思う。

 

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馬原コーディネーターからの結びの言葉 

  「一歩先を見据えた食品表示行政の実現に向けて~徳島からの発信~」というテーマで熱心にご議論いただきました。
 徳島県は食の生産県であり,消費県でもあります。消費者も生産者も同じテーブルで,各関係者が協働して,科学的根拠に基づいた先進的な「徳島県食品表示の適正化等に関する条例」が制定されました。徳島県から東京へ,そして日本全国の消費者が,安心して健康な食生活ができるように,食品表示行政が更なる次元を迎えることを祈念いたして,本フォーラムを閉じたいと思います。

 

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閉 会 挨 拶  

   挨拶 松内 雅博 一般社団法人 徳島県食品衛生協会会長

 消費者庁等の徳島移転の実現に向けて,一緒に応援していくことについて会場全体から拍手で賛同がありました。それを受け,県には挙県一致で消費者庁等の移転の実現に向けて取り組んで頂きたいとの挨拶で,閉会となりました。 
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6 参加者の感想等(一部抜粋)
□第一部の特別講演が大変分かりやすくためになった。徳島ならではのスダチに関する研究・取組が新鮮だった。今後の発展が楽しみ。パネルディスカッションでは,様々な意見を聞けてよかったと思う。
□知らなかった部分を知れたし,健康食品への考えも変わった。徳島から消費者行政が発信できることを信じています。
□知事のあいさつにはじまり梅垣先生の講演,敷島氏のスダチチンの取組みも良かったです。早くに臨床もして頂きたいと思います。パネルディスカッションも良かったです。馬原先生の司会もすばらしかったです。
□消費者の選択の重要性を心にきざみつけた。
□一歩先を見据えた食品表示。小学校からの授業,期待しています。
□機能性表示食品についてよく分かった。「木を見て森を見ず」一ヶ所だけ見ていてはダメ。全体を見るということは大切であると思った。
□梅垣氏の講演は大変理解ができて良かった。機能性表示食品のことをよく説明してくださったので,自分が利用しているサプリメントをもう一度見直すきっかけになりました。
□学校でも食育に関連して取り入れたらいいと思います。学校教育では,自分の口に入れる食品を自分で考え選ぶことを教えるのも大切だと思います。

 

すだちくん.jpg本フォーラムを通じて,食品表示や食品表示行政についての相互理解が深まり,すだちくん.jpg 

       参加者の表示に対する意識を高めることができました。           

お問い合わせ

消費者くらし安全局安全衛生課
食品表示企画担当
電話:088-621-2110
ファクシミリ:088-621-2848