高圧ガスの基礎知識(第3回)
消防保安課では「高圧ガス保安法」という法律を所管しています。
この法律は高圧ガスの規制や自主保安の取り組みを促進することにより、公共の安全を確保することを目的に制定されています。
このシリーズでは、高圧ガス保安法による規制のあらましや基礎知識に加えて、ちょっと得した気分になる雑学をご紹介しています。
このシリーズでは、高圧ガス保安法による規制のあらましや基礎知識に加えて、ちょっと得した気分になる雑学をご紹介しています。
今回は、「高圧ガス」の危険性について「その2」です。
前回は
「見た目以上にそこにある」(筆者命名)
という危険性についてお話しました。(忘れた方は復習してくださいね。)
今回は、「不活性ガス」の危険性です。
不活性ガスは、毒性ガスでも、可燃性ガスでも無い。安全だといわれているガスです。
例を挙げれば「炭酸ガス」等があります。炭酸飲料を開けるとプシューと音が出て、ぶくぶくと出てくる泡。あれが炭酸ガスです。(水に溶け込んでます。)
また、ご家庭の冷蔵庫やエアコンにもフルオロカーボン(フロン)という不活性ガスが使われています。(小規模なものは法規制の対象外です。)
毒性でも可燃性でもないので、少量であればそこにあっても危なくは無いわけです。
しかしながら、高圧ガスは「見た目以上にそこにある」わけですから、たくさん漏れたらどうなるか・・・・・・・
漏れたガスが周りの空気を押しのけて呼吸で吸い込む空気が減って、もちろん空気中に21%程度とされている酸素濃度も減りますよね。
それでは、「酸素濃度低下の人体への影響」をみてみましょう。
酸素濃度
21% | ・・・・・ | 空気中の正常な酸素濃度 |
16~12% | ・・・・・ | 脈拍、呼吸数などの増加、精神集中に努力がいる。頭痛。 |
14~9% | ・・・・・ | 判断力が鈍る。酩酊状態。不安定な精神状態。体温上昇。 |
10~6% | ・・・・・ |
意識不明。中枢神経障害。痙れん。 |
6以下 | ・・・・・ |
昏睡。呼吸停止。 |
(出典:高圧ガス保安協会「高圧ガス製造保安係員講習テキスト」)
計算してみましょうか。
閉め切った部屋でフルオロカーボンガス(フロンガス)が漏れて30%空気に混ざったとします。
フロン:30%、空気70%ですね
空気70%中酸素はその21%ですね
すなわち酸素は70%*21%=14.7%
吸い込む全体の中の比率は
14.7%となります。・・・頭痛等の危険があります。
しかも、たちの悪いことに不活性ガスの多くは無色・無臭で体調が悪くなってから漏れているのに気づくことになります。
工場などでは、酸素欠乏による死亡事故も報告されています。
高圧ガスは「見た目以上にそこにある」
わけですから、換気など、取り扱いには十分な注意が必要です。
第2回、第3回とやや堅いお話が続きましたので、高圧ガスの危険性に関するお話はここでいったん休憩します。第4回では「意外と身近な高圧ガス」と題して我々の周りにある高圧ガスをご紹介します。
第4回に続く