「南海地震を知る~徳島県の地震・津波碑~」の連載について

地震・津波碑

日本最古の津波碑 : 1364年正平南海地震津波の供養碑「康暦碑」徳島県海部郡美波町東由岐

地震・津波被害の歴史を知る資料として、「南海地震を知る~徳島県の地震・津波碑~」をまとめました。本県には、古い貴重な地震・津波碑が多く残されており、これらの碑には、今後の地震・津波防災に生かすべき有用な多くの教訓が刻まれています。

次回から、県内各地に残る過去の南海地震・津波に関する記念碑、供養碑や扁額などを紹介していきます。(添付資料参照:徳島県の地震・津波碑の位置)

~巻頭のことば~

徳島大学名誉教授 村上 仁士

次の南海地震は今世紀前半にも起き、そのエネルギーは1946年昭和南海地震の4倍以上、徳島県での死者数は4,300名、建物全壊棟数は49,700棟と予測されています。徳島県民総ぐるみで、次の南海地震に立ち向い、被害を最小化することに努めなければなりません。

この冊子には、県内各地に残る過去の南海地震・津波に関する記念碑、供養碑や扁額など(以下、総称して碑と呼ぶ)の調査結果がまとめられています。碑には、犠牲者への供養とともに当時の被害を後世に伝へ、二度とこうした悲惨な被害を後世の人々に味あわせたくないという先人の想いが込められており、その心を私たちは受け継いでいかなければなりません。

徳島県には、他に例をみない古い貴重な地震・津波碑が多く残されています。すなわち、太平記にも記された日本最古の津波碑といわれる1361年正平南海地震や1605年慶長南海地震をはじめ1707年宝永地震、1854年安政南海地震などの地震・津波碑がそれらです。さらに、終戦後間もない1946年昭和南海地震直後の碑に加え、外国で発生した1960年チリ地震津波の津波高を印した碑など、近年建てられた新しい碑も見られます。

これらの碑には、今後の地震・津波防災に生かすべき有用な多くの教訓が刻まれています。しかしながら、碑面が風化・摩耗して碑文が読めなくなったものもある一方、先人の想いを継承するため碑文を再度蘇らせ新しい碑を建立している地域もあります。ここに取り上げられた碑以外にも、県下各地にはまだ地震・津波碑が存在している可能性もあり、この冊子が埋もれた貴重な碑の発見の契機となることも期待されます。

この冊子には、 1)碑の名称、2)過去の南海地震の名称、3)碑の所在地と地図、4)碑の写真と碑文の概要、5)碑から得られる教訓などが記されています。

この冊子を手に、現地を訪ね、当時の被害に想いを馳せ、碑の教訓を生かし、次の南海地震に立ち向う心構えの一助となることを期待したいものです。また、学校や地域における防災教育・防災学習にも活用していただきたいと思います。

今では、もとの湿地や池、塩田などが埋め立てられ、地形や土地利用の形態、社会構造も過去の南海地震時と大きく変化していて、被害の形態も複雑、その規模も格段に大きくなることが考えられます。そのため、次の南海地震発生時には、自助・共助・公助の機能を最大限に発揮し、被害を最小化するとともに、早期に復旧・復興できるしくみを県民総ぐるみで考えておきたいものです。

先人の叫び、過去の教訓を現在に生かす知恵のヒントがここから得られることを望みます。

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